プロのカメラマンが解説する物撮り(商品撮影)のコツ

プロのカメラマンが解説する物撮り(商品撮影)のコツ

物撮りをするにあたり、「何を、何のために撮影するか?」を明確にする事がとても大切になります。
趣味で撮影するのならば兎も角、ECサイトに商品として掲載する場合、「どう消費者に訴えていくか?」という事を考えるのは非常に大事です。

また、言うまでもない話ですが、売りたい気持ちを優先させすぎるあまり、画像加工ソフトで消費者が分からないだろう、気が付かないだろうという気持ちで画像の彩度を上げすぎてハイキー※な感じにしてしまう等の詐称行為は絶対にしないほうが無難です。

※ハイキーとは、端的に言うと色味を極端に上げた写真のことを指します。

無加工の写真
無加工の写真
下矢印
ハイキーに加工した写真
ハイキーに加工した写真

写真を撮影し、無加工でSNS等のWEB上に上げる、あるいはUSB等に入れて渡すという行為を”撮って出し“と呼びますが、このままで魅力的な写真というのは概ね万~数十万円の大金を投じてモノブロックなどの照明器具を複数台用意できて初めて可能となるか、曇りの日にいい感じに日射しが和らいでいる時に撮影できればという事になります。
無修正でそれなりにイケる写真というのは、人工光源や太陽光等の人工光源の性質をよく理解し、扱うことのできる知識と技量が合わさって初めて可能となります。

商品撮影は、誰に、何をアピールするか?

宣材写真としての商品撮影と、趣味で物や料理等を撮影する意味を、勘違いしている駆け出しのフリーランスカメラマンが時々います。
何を勘違いしているのか?というと、言うまでもなく自分の世界観を前面に出したアーティスト感丸出しの商品写真です。
Twitterやインスタなどで“♯わたしの世界”というハッシュタグが付いていそうな写真ですね。
フリーランスになりたての方に多いかもしれません。

自分の世界観を一方的に出し、それをアピールしていくというのは、画家や彫刻家等の芸術家と同じように個性を認めてくれて、気に入ってくれて、ファンになってくれるという流れで初めて収益化でき、商売としても成り立つものです。
私は相談されるごとに声を大にして「“わたしだけの世界”なんてお客様は求めてないんだよ!」と言っちゃいますが、まさにこれなんです。
売れない芸術家というのは、この段階で躓いており、まだその芸風を認めてくれる人に気が付かれていないか、あるいは(そもそもその芸風を認めてくれる人など)居ないのか?という事になります。

ただ、この記事を読まれている方は、ECサイトで売上を上げる為の知識を求めてここを読まれているのではないかと推察し、そういった方々向けに書き進めていきたいと思います。

本格的に話をする前に、少し身の上話になりますが、私は長いこと販売員として販売業に携わってきて、カメラマンになったという異色の経歴があります。
なので、ここを読まれる方々で、これから初めて物撮り(商品撮影)に挑戦したいと思っている方々と同じ目線というか、目指すべき一つの形としての先達程度にはなるのではないかと推察しています。

さて、販売員時代に私は先輩や優秀なセールスマンのような同期の同僚達に日々しごかれるうだつの上がらない販売員でした。
物を売るという事が分かっているようで何も分かってない小僧といったところでして、「レジにいれば皆買っていくだろう」くらいにしか思ってかったのです。

販売員時代(イメージ)
販売員時代(イメージ)

物撮り(商品撮影)の話から脱線しているようにも思われるかもしれませんが、まさにここの意識が大切なのです。
この「レジの前に居れば皆高かろうと買っていくだろう」という認識は間違っていて、先ず、ここを読まれる皆様に声を大にして申し上げたいことは、いい商品ほど売れないという事です。

例えば皆様、車やバイク、 テレビゲーム はお好きですか?スマホやパソコンを購入したことありますか?
ちなみに私は、日頃新品で40万円の一眼レフを使い、この記事をボディーだけで30万円もするゲーミングパソコンで書いています。

パソコンなら10万円を切っているノートパソコンなどごまんとありますし、デスクトップ型だって、秋葉原で探せばブラウザとボディーがセットで10万円程度のものもあるでしょう。
私が何故、今この記事でこんな事を書いたかというと、お金を持っている自慢をする為ではありません。
「なんで、安いものを押しのけて高額な機材を購入するに至ったのか?」という事が大切なのです。

高い商品でも安い商品でもそうですが、良い商品かどうかを決めるのは、消費者ですよね?
その消費者に良い商品かどうかを判断してもらう為には、「いかにその人にとってこの商品が必要であるか」を明確に説明する必要があります
それを口頭で説明するのがセールストーク、文章にしたものをセールスコピーライティングと言います。
そして、その説明をより魅力的に彩るのが商品写真であり、場合によってはセールスコピーライティングよりも雄弁に語ってくれる事もあります。
世の中には文章を読むのが苦手な方は多くいますし、そういう方々にとっては、言葉や文章よりもダイレクトに語りかけてくれる商品写真が殊の外重要になってくるわけです。

商品写真を撮る際には、大前提としてこういった心構えや知識が無ければ、前述したような誰にも求められていない“私だけの世界”を撮った写真になってしまうわけです。
先ずは「アートと宣材写真はまるっきり性質も意識も違うのだ」という事をご理解ください。
(こういう話をすると、「マインドなんて関係ない!」という声がひよっこフリーランスから上がりそうですが、意識は行動を形作りますから、要らないと切り捨てずに頭の片隅にでも留めておいて頂けますと幸いです。)

時には文章(コピーライティング)より雄弁に語ることもあるのが写真
時には文章(コピーライティング)より雄弁に語ることもあるのが写真

レイアウトと商品

カタログのように白バックや黒バックで商品だけ撮影する以外に、レイアウトをして撮影するというイメージカットの仕事を頂くこともあります。
この時に注意すべきところは、「主役である商品以上に目立つものを構図に入れない」事と、「ごちゃごちゃしない」事です。

絵画の世界でも、絵をパッと見たとき、一番先に視線が止まるところがその絵の主役であり、次に目が行くのが脇役です。
意識しないと分からないかもしれないので、なんでも良いので絵をパッと見ると良いと思います。
例えば、あなたが世界的に有名な絵画ミレー作の「落穂拾い」やフェルメール作の「ミルクを注ぐ女」(検索してみてください)をパッと見て、最初にどこを見ますか?つまりそういう事です。

主役を引き立て、脇役をバランスよく・・・この意識は物撮りのみならず、ありとあらゆる写真に応用可能で、上手い写真というのはそういう構成で出来ています。
もしも自分にはセンスが無いと感じているのであれば、絵画を見て構図などを学ぶといいと思います。
絵画は写真の先祖ですから、非常に重なる部分が多いのです。

レイアウトのセンスを磨くためには絵画を見ましょう
レイアウトのセンスを磨くためには絵画を見ましょう

あとはそれを理解した上で、ターゲットとなるお客様の事を考えた写真を用意する事が大事です。

例えば料理の写真を例にします。
肉好きの人に売りたい商品なのに、商品写真では野菜が前面に出てて、肉が脇役のように後ろの方に写っていたのでは、ターゲット(肉好きの人)には魅力的に感じられません。

しつこいようですが、あなただけの世界観というものは誰も求めていません。
ECサイトでは、ターゲットに合った写真が求められるのです。
つまり仮に、ちょっとセクシーなフィギュアをECサイトに出すとして・・・もうお分かりですよね?

必要な機材のお話~写真の美しさの秘訣は光にあり~

私はとあるブロガーさんの、被写体にだけ光が当たっていて背面は真っ暗な写真(暗い部屋で巧みに照明を操り撮影された写真)を見て、写真というのものに興味を持ちました。
本格的にやってみようと思い立った時、私は収入が低い職業の一つであるペットショップ店員で、さらにお金がない&先行投資という意識もないタイプの人間でしたので、先ず手近な道具を使ってみようと思いました。
そこで用意したのは、一本の卓上スタンド(勉強机の上にあるアレ)とコンパクトデジタルカメラ(普通の安いデジカメ)です。

これらを使って植物や、は虫類等の比較的動かないものを対象に、片手でカメラ、片手で卓上スタンドを持ちながら、自分がいいなと思う写真を撮っていました。
美しい写真の秘訣としてライティングの重要性くらいは分かっておりましたので、かっこいい写真や美しい写真を見ては、どこからどうやって光を当てているのだろうか?と仕事が終わってから毎晩のように研究し、光を対象物から離したり弱くしたりして写真を撮影したものです。
この経験は非常に役立っていて、この時光の当て方等を学ばなかったら今のようにはならなかったかもしれません。

試行錯誤しながら写真の撮り方を研究していた経験が今も役に立っています
試行錯誤しながら写真の撮り方を研究していた経験が今も役に立っています

画素にこだわりすぎない

携帯のカメラからランクアップしてカメラを本格的にやりだす時に、多くの方が誤解されているのが、画素についてです。
画素というのは美しい写真を形作る要素の一つでしかありません。
撮った写真をどこで見るのかというと、多くの方はパソコンや携帯等で見る事になると思うのですが、その背景を鑑みると、私は画素はあまり気にしなくていいと考えています。
というのも、例えば、現在の携帯のカメラの画素は1,000万画素を優に超えていて、機種によっては1億800万画素のものも存在します。(2021年現在)
しかし、携帯の画面やPCのブラウザは、実はそのスペックを活かしたまま表示することはできないのです。(上限200万画素程度)
つまりせっかく高い画素で写真を撮っても、携帯の画面やPCのブラウザで見る人にとっては、まさしく宝の持ち腐れになってしまいます。

大きく引き伸ばして印刷するのであれば話は変わってくるのですが、そうでもなければ画素はそこまで気にする必要はないかと思います。
ここで言いたかったのは、「画素さえ良ければ全て美しい写真である!」という思い込みを捨てましょうという話です。

美しい写真に大事なのは光の当て方と質!

10年以上前、卓上スタンドとコンパクトデジタルカメラ(或いはデジタル一眼レフ)で写真を撮ることが一部で流行っていました。
卓上スタンドの白熱灯と、白い紙の上に置いた物に至近距離から当てて明るさを取り、三脚で固定、あるいは手持ちでプログラムオート(Pモード)で撮るだけでもかなりいい感じになるのです。
普通に適当に撮るだけよりは映える写真になるので、お金もかからないですし今でもお勧めできる方法です。
ただし、プロとして仕事としてやっていこうという方はそれで満足してはいけませんし、カタログに使う写真ともなれば色味も気にしなければいけません。
ということで、ここからは私がお勧めしたい、物撮り(商品撮影)に使える機材をいくつかご紹介します。

先ずはモノブロックです。
安くても1灯につき数万円はしますが、可能であれば1灯10万円以上の高価なものを買うことをお勧めします。
これが最低3灯もあれば、大きなものやハンガーにかけた衣服なども、綺麗に撮れるのではないかと思います。

物撮り(商品撮影)では、1灯ではなく、複数方向から光を当てる多灯のライティングが基本となります。
仕事としてやっていきたいなら、ケチって安いのを1灯で・・・という考えは止めましょう。

1灯で撮った写真
1灯で撮った写真
多灯で撮った写真
多灯で撮った写真

小物系であれば、ライトボックスという光を和らげる機材が使えます。
ライトボックスの真上から1灯当ててやれば、十分に綺麗な写真が撮れます。
この程度であれば、モノブロックも数万円程度の安いもので大丈夫です。

個人的にはLEDライトも好きです。
撮影用に調整された太陽光に近い光を出し、加工が無くても十分自然に綺麗に見えるタイプがお勧めです。
ただしLEDはモノブロックより光量が圧倒的に弱いので、大物を撮影する時等は少し不便です。

物撮り(商品撮影)をする時には、全体がしっかり写るようカメラの露出は絞りますし、ISO感度も基本は上げずに三脚固定で撮影するので、カメラの明るさを上げる要因がシャッタースピードしかありません。
しかしシャッタースピードを遅くすれば明るくはなりますが、ブレて使い物になりません。
クリップオンストロボ等の照明機材も使えなくはないのですが、クリップオンストロボは、近距離であれば明るさは十分なのですが、一回発光してから次に発光するまでインターバルがあり、2発目のシャッターを切った写真は暗くなるか発光しないかのどちらかである場合が殆どです。

その点モノブロックは、インターバルは勿論あるのですが、一回の発光量がとても大きく連写性に優れているので、大量に物撮りをしなければならないECサイトの商品撮影には便利です。
上記にて、モノブロックは高価なものにするべきと説明しましたが、これは使用する時は発光のインターバルを加味し、フル発光の1/2かそれ以下で使うことが多いので、その落とした発光でも十分な光の量と連射性を確保する為なのです。
例えば500w相当の光が欲しければ、1000wのモノブロックでなければならないという話です。

衣文かけにかけた衣服を撮影するとか絵画を撮影するとかならば兎も角、ライトボックスを使って1灯で小物を撮りたいのであれば、LEDライトやモノブロックがいいと思います。
個人的な使用感になりますが、電球タイプは相当電球を使うことを考えると、最初は安くてもいいかもしれませんが、後々のコストを考えるとお勧めしません。

実際に筆者が使っている撮影機材の一部
実際に筆者が使っている撮影機材の一部

また、モノブロックにせよLEDにせよ電球タイプにせよ、照明は直接当てるのではなく、ソフトボックスやライトボックスなどの照明緩和の道具を使うか、撮影用にヨドバシやビックカメラなどで売られている大きなトレーシングペーパーを照明と被写体の間に咬ませて光を緩衝してあげないと、写真が硬い感じに仕上がってしまいます。
この「硬い感じ」はプロの現場では非常に嫌われる要素なので、特に気を付ける必要があります。

また、料理等を撮影する際のちょっとしたワンポイントアドバイスですが、照明は背面左側(半逆光)から光を当てると雰囲気が出ます。

何故左側から光を当てないといけないのか?という事に関して、教えてくれたフォトグラファーの方は「理由は知らない。そう教わったからそういう物だ。」と言っておりましたが、薬学や医学に精通した方に話してみたところ、「人間は左側から光が当たる方が安心感があり自然に見える。それは多分刷り込みで、小さい頃から右手で文字を書くという事を強要されて育てられ(サウスポーもいますが)、その為、勉強するときも右手に影を作らないように左上からライトを当てて勉強し、過ごしてきたからだ。」と言われ、非常に納得できるなと思いましたし、実際そうなのかもしれません。

照明を直当てした(硬い感じの)写真
照明を直当てした(硬い感じの)写真
下矢印
照明を背面左側(半逆光)から当てた写真
照明を背面左側(半逆光)から当てた写真

まとめ

ECサイトでは写真一枚で相手の心を動かす必要があります。
更にはキャッチコピーやセールスコピーライティングなども組み合わさることで、魅力的な広告として機能してくれるようになります。
過剰に加工するなど詐欺写真はいけませんが(これはあなたの信頼を失墜させます)、自然な感じで、かつ商品を魅力的にプレゼンテーションできるような写真を用意する。
まとめると、物撮り(商品撮影)に求められるのはそういう事なのです。