これまでのコラムでは、商標登録の大切さやメリットをお伝えしてきました。
商標登録をするには特許庁の審査で「登録査定」されることが必要であり、すでに登録された商標と同一または類似と認定された場合、登録できない場合があります。
しかし、同一または類似の商標があるなしに関わらず、そもそも「登録できない商標」があることをご存知でしたか?
今日はその「登録できない商標」にどんなものがあるのかご紹介していきたいと思います。
”普通の言葉”は登録できない?
商標を出願すれば、どのような商標でも商標登録が認められるわけではありません。
商標登録が認められるためには、その商標が他の商品と識別することができることが要件の一つとなっていて、これを「識別力」と言います。
商標法第3条では「識別力がない商標」が具体的に定められています。
商標登録できないもの1.「普通名称」
読んで字の如く、その商品やサービスの一般的な名称は商標登録を受けることはできません。
例えば指定商品「りんご」に使用する商標として「Apple」を出願する場合や、

指定商品「パソコン」に使用する商標として「パーソナルコンピューター」を出願する場合などです。

また、一般化している俗称や略称も普通名称にあたるため、以下のような場合も、そのものの名称でなくても商標登録を受けることができません。
指定商品「スマートフォン」に使用する商標として「スマホ」を出願する場合や、

指定商品「アルミニウム」に使用する商標として「アルミ」を出願する場合など。

商標登録できないもの2.「慣用商標」
慣用商標とは、もともと一般的には使われていなかった言葉が、その商品やサービスの業界において多く使用されるようになった結果、自分と他人の商品やサービスの識別をすることができなくなった商標のことを言います。
識別力を失った商標は登録を受けることができません。
例えば「正宗」と名前がついている日本酒を皆さんも見かけたことがあるのではないでしょうか?
なんと「正宗」は全国酒造に149銘柄も同じ名前の日本酒があり、「正宗」は識別力を失ってしまいました。
結果、「清酒」に使用する商標として「正宗」を出願しても、商標登録を受けられないとされています。

参考:NIKKEI STYLE 日本酒の銘柄「○○正宗」なぜ全国各地に?
https://style.nikkei.com/article/DGXNASIH17003_X10C13A1AA2P00/
同じように、色にも識別力を失ったものがあります。
例えば葬儀の執行に関する「黒色及び白色の組合せの色彩」や「婚礼の執行」に関する「紅白」も、同様に慣用商標とされ登録を受けることができないとされています。
業界でもはや一般的になってしまった言葉、色、図形は注意が必要です。

※色に関する商標登録については、以下の記事をご確認ください。
商標登録できないもの3.「記述的商標」
記述的商標とは商品・サービスの産地・品質・効能・用途などをそのまま表した商標のことです。
例えば以下のようなものは、登録を受けられないとされています。
項目 | 識別力がない記述的商標例 |
産地 | 商品「いちご」に、商標「栃木いちご」 |
販売地 | 商品「いちご」に、商標「東京いちご」 |
効能 | 商品「いちご」に、商標「肌が綺麗になるいちご」 |
品質 | 商品「いちご」に、商標「最高級いちご」 |
原材料 | 商品「クッキー」に、商標「いちごクッキー」 |
数量 | 商品「いちご」に、商標「30個入りいちご」 |
価格 | 商品「いちご」に、商標「100円いちご」 |
用途 | 商品「いちご」に、商標「ジュース用いちご」 |
いかがでしょうか、「え?これもダメなの?」と思うものがたくさんあったのではないでしょうか?
この他にも商標法では
「ありふれた氏又は名称(佐藤、鈴木など)」
「極めて簡単で、かつ、ありふれた標章(アルファベット1〜2文字など)」
等たくさんの「登録できない商標」の決まりがあるのです。
商標出願を検討する時には、出願前にしっかり調べておきたいものですよね。
参考:特許庁 出願しても登録にならない商標
https://www.jpo.go.jp/system/trademark/shutugan/tetuzuki/mitoroku.html
独自性のある名前を考えよう!
では、そうしたたくさんの決まりの中で「登録される確率が上がる商標」とはどのようなものなのでしょうか?
それはズバリ「独自性のある商標」です。
他の人が使っていない造語や、普通名称の語尾を工夫することで商標に独自性を持たせることができます。
例えば、商品「タピオカ」に対して「タピオカ」という商標は登録することができませんが「タピオカ」を連想できる独自性のある言葉は商標登録がされています。
以下の「タピックス」はタピオカミルクティーの店舗名ですが、語尾を工夫することで普通名称にならず、商標として登録されています。
タピオカを連想させつつも、独自性のある単語に変換されています。

また、以下の「スマタピ」はスマホアプリから注文できるテイクアウトのタピオカドリンクサービスの名前です。
「スマホ」と「タピオカ」を組み合わせた独自性のある造語ですよね。

引用:特許庁データベース J-PlatPat
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/
商品、サービス名を商標登録しようと考えたときに、それをネットで検索したりして「一般的に使われている言葉」や「識別力がない言葉」に該当しないか、チェックをすることが必要です。
もしそれに該当していたら、語尾を変えたり、独自性のある単語を追加するなどして、オリジナルの名前に変更することも検討してみてください。
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