ECサイトを立ち上げたり、運営したりする際には、サイトの作成方法や販売戦略だけでなく、守らなければならない様々な法律についても知っておく必要があります。
ECサイトの運営において、特に知っておかなければいけない法律の一つが「特定商取引法」なのです。
「特定商取引法っていう用語は聞いたことがあるけれど、よくわからない」
「特定商取引法に沿ったサイト運営をしているけど、すべてをカバーできているのか」
ECサイトを運営している方の中には、上記のような疑問を持つ方もいるのではないのでしょうか。
実際、特定商取引法では、販売事業に関する様々な規定がなされているため、一度ですべてを理解するのは難しいです。
また、特定商取引法は過去に何度も、特に直近では2022年6月に改正されたため、自社のサイトが法律を守っているのか、逐一確認しなければいけません。
この記事では、ECサイトでは必ず守らなければならない法律である特定商取引法について詳しく解説していきますので、是非参考にしてみてください。
特定商取引法とは?
特定商取引法とは、正式名称「特定商取引に関する法律」であり、略して「特商法」とも呼ばれます。
特定商取引法は、訪問販売や勧誘販売など消費者とのトラブルが発生しやすい取引に関して、消費者を悪質な取引の被害から守るために、事業者のルールを規定している法律です。
具体的には、契約や申し込みに関して、一定期間内であれば無条件で契約を撤回したり、解除したりすることができる「クーリング・オフ」も特定商取引法にて定められています。
消費者との取引全般に関して、ルールを定めている「特定商取引法」は、インターネットを介して商品を販売するECサイトにももちろん適用される法律なのです。
特定商取引法の概要
特定商取引法は、消費者を取引に関するトラブルから守ってくれる法律ですが、その取引対象はわかりやすく分類されています。
また、特定商取引法で規定されているルールは、主に「行政規制」と「民事ルール」の2つに分けられています。
特定商取引法の対象となる取引類型
特定商取引法にて、消費者とのトラブルが発生しやすいとされている取引は、以下の7つの取引類型に分類されます。
- 訪問販売:消費者の自宅に訪問して、商品の販売や契約をおこなう取引
- 通信販売:雑誌やインターネットなどで宣伝し、通信手段で申し込みを受ける取引
- 電話勧誘販売:電話で勧誘をおこない、申し込みを受ける取引
- 連鎖販売取引:個人が販売組織を連鎖的に拡大しておこなう取引
- 特定継続的役務提供:長期的なサービスの提供に対して高価な対価を約する取引
- 業務提供誘引販売取引:仕事に必要なものを売って、金銭的負担を負わせる取引
- 訪問購入:消費者の自宅へ訪問して、品物の購入をおこなう取引
特定商取引法では、このような7つの取引類型を対象として、消費者を守るためのルールを事業者に課しているのです。
そして、ECサイトは7つの取引の中で、2つ目の「通信販売」に該当するため、特定商取引法の中でも特に「通信販売」について規定されているルールを見ていくことになります。
行政規制
特定商取引法の行政規制では、主に以下の4つの規制がおこなわれています。
- 氏名等の明示の義務付け:勧誘開始前に消費者に事業者名と目的を伝える必要がある
- 不当な勧誘行為の禁止:価格や支払い条件に関する虚偽の報告、または故意に告知しなかったり、消費者を威迫するような勧誘をしたりすることを禁ずる
- 広告規制:事業者が広告をする際には、重要事項を表示することを義務付け、また虚偽・誇大な情報を表示することを禁ずる
- 書面交付義務:事業者は契約の締結時に、重要事項を記した書面を交付しなければいけない
ECサイトでは、インターネット上で契約を締結する前に上記の4つに関して、消費者に分かりやすく正しい情報や重要事項を明示しなければならないのです。
違反した事業者は、「業務改善」や「業務停止命令」、「業務禁止命令」などの行政処分が下されることになるので、注意が必要です。
民事ルール
特定商取引法では消費者と事業者間のトラブルを防止し、トラブルの解決を容易にするために、行政規制の他に、以下の3つの民事ルールが規定されています。
- クーリング・オフ:一定期間内であれば無条件で契約を撤回したり、解除したりすることができる
- 意思表示の取消し:事業者が故意で不告知などを行ったことで消費者が契約の承諾をしてしまった場合、その意思表示を取り消すことができる
- 損害賠償等の額の制限:事業者が消費者に請求できる損害賠償金額の上限を設定している
ECサイトのような通信販売には、クーリング・オフは規定されていませんが、商品の引き渡し日から8日以内であれば、契約を解除することができます。
行政規制・民事ルールに関してより詳しく知りたい方は、以下の消費者庁の公式サイトを参考にしてみてください。
▶特定商取引法ガイド -特定商取引法の規制対象となる「通信販売」について-
特定商取引法に基づく表記のポイントと注意点
ECサイトを運営していく際には、「サイト上に特定商取引法に基づく表記」を記載することが必ず必要となります。
運営しているECサイトにて、始めて商品を購入するユーザーの中には、「このショップで購入しても大丈夫だろうか」という不安を抱えている方も少なくないでしょう。
したがって、ECサイト上に「特定商取引法に基づく表記」というページを作成し、運営側や商品に関する情報を開示することで、購入者が抱える不安を払拭できるのです。
ここでは、「特定商取引法に基づく表記」を記載する際のポイントと、注意点について詳しく解説していきます。
その1:事業者に関する情報
まず、「特定商取引法に基づく表記」には、ECサイト事業者に関する情報を記載します。
法人でECサイトを運営している場合は、通称や屋号ではなく、登記簿上の社名と、代表者もしくは通信販売業務の責任者の氏名を記載します。
また、個人事業主の場合であっても、氏名もしくは、商業登記されている屋号を記載しなければいけません。
所在地に関しては、法人の場合は本店の住所、個人事業主の場合は現在に活動をしている拠点の住所を番地まで記載する必要があります。
その2:価格・商品の引き渡しに関する情報
次に、商品の販売価格に加えて、送料や手数料など、商品の引き渡しに関する情報を顧客に分かりやすいように、明確に記載する必要があります。
記載しなければいけない価格・商品の引き渡しに関する情報に関しては、具体的に主に以下の4つがあります。
- 販売価格:商品やサービスの販売価格を「消費税込み」で価格表示します
- 支払い方法及び、支払い時期:対応している全ての支払い方法、また支払いが複数回発生する場合は、具体的にいつ発生するのかを記載します
- 引き渡し時期:それぞれの支払い方法について、商品が消費者に届く時期を具体的に記載します
- 送料:販売価格に送料が含まれない場合は送料を別途記載し、運送会社や地域によって異なる場合は、その旨も具体的に記載します。
また上記の4つの情報以外にも、販売価格や送料以外に、消費者が負担しなければいけない手数料がある場合は、その内容及び金額を記載する必要があります。
ECサイトでは、その他の消費者が負担しなければいけない費用として、主に梱包料や代金引換手数料が、消費者が負担しなければいけない手数料として考えられます。
その3:返品交換に関する情報
次に、商品の返品に関する情報を具体的に記載します。
特定商取引法では、ECサイトのような通信販売に関しては、商品の販売に関する規定である「クーリング・オフ」が適用されません。
しかし、特定商取引法第15条の3で、通信販売における売買契約の解除に関する規定が定められています。
条項によると、事業者が契約の撤回や解除に関して、特約を明確に表示している場合、購入者はその特約に従わなければならない旨が記載されています。
したがって、商品の返品や、申し込みの撤回や解除について特約(特別な条件)がある場合は、その条件や返品方法、送料の有無などを具体的に記載する必要があるのです。
「特定商取引法に基づく表記」のページ例
「事業者に関する情報」、「価格・商品の引き渡しに関する情報」、「返品交換に関する情報」の3つを記載した「特定商取引法に基づく表記」のページ例は以下のようになります。
販売業者 | 株式会社 〇〇〇 |
代表責任者 | 〇〇 〇〇 |
所在地 | 〇〇県△△市□□区◇◇ ×××× |
電話番号 | 〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇 |
メールアドレス | 〇〇〇〇@〇〇〇〇-〇〇.com |
申込期限 | 注文後〇日以内とします。 |
消費税 | 食品の消費税は8%、食品以外の商品、また送料の消費税は10%です。 |
お支払い方法 | 代金引換、銀行振込、クレジットカード決済が可能です。 |
お支払い期限 | 注文より○週間以内にお支払いください。 |
商品引き渡し時期 | 代金入金確認後、○○日以内に発送します。 |
商品代金以外の必要料金 | ・銀行振込でご購入の際は振込手数料 ・代金引換でご購入の際は代引手数料 |
返品・交換について | 返品・交換は、商品到着後〇日以内にお願いいたします。希望の方は、お問い合わせフォームにてご連絡ください。 |
送料について | 全国一律○○円 ※○○○○円以上は送料無料 |
上記の表はあくまで参考となりますので、具体的には下記URLの特定商取引法ガイドを参考にして、各サービスに合わせてページを作成してみてください。
▶特定商取引法ガイド -通信販売広告について-
2022年6月に改正された4つの変更点
特定商取引法は、消費者の声への対応や、新たな販売方法の誕生などの時代の変化に伴って、規定が改正されてきました。
今までに何度も改正がされてきましたが、直近では2021年6月に可決された規定の修正が、2022年6月1日より施行されました。
2022年6月に改正された点は、主に以下の4つになります。
- 最終確認画面ページでの注文内容に関する6条項の表示義務
- 消費者を誤認させる記載の禁止
- 申し込みの撤回、キャンセルを妨げる不実告知の禁止
- 注文に関する取消権の設定
ここでは、それぞれの改正点について詳しく解説していきます。
最終確認画面ページでの注文内容に関する6条項の表示義務
改正された特定商取引では、まずECサイトのカートシステムにおける最終確認画面で、顧客が注文を確定する前に、以下の6つの事項を消費者が確認できるように表示することが義務づけられました。
- 分量:商品の数量や提供回数、また定期購入契約の場合は各回の分量
- 販売価格・対価:商品の販売価格(送料を含む)、複数の商品を購入している場合は支払い総額、また定期購入契約の場合は2回目以降の代金
- 支払いの時期・方法:料金の支払い時期や支払い方法、また定期購入の場合は、各回の請求時期
- 引渡・提供時期:商品の引き渡し時期やサービスの提供時期、また定期購入の場合は、次回の発送時期などについて
- 申込みの撤回、解除に関すること:商品の返品や解約時の連絡先や連絡方法、また返品や契約の解除のための条件を、顧客が分かりやすいように表示する
- 申込期間:季節限定商品などの期間限定商品のように、商品に申し込み期間が設定されている場合は、その申込期間
ECサイト事業者が上記の項目に関して、購入者に明確に表示せずに、購入者と契約を締結した場合は、購入者はその契約の取り消し権を行使できるようになりました。
また、カートシステムにおける最終確認画面に限らず、SNSやチャット型のECサイトの場合は申し込み完了前の確認画面で、必要事項を表示しなければいけません。
消費者を誤認させる記載の禁止
2つ目に、改正された特定商取引では、注文内容や契約の手続きに関して、消費者を誤認させるような情報の記載を禁じています。
例えば、定期購入の場合、商品購入の最低継続期間があるのにも関わらず、注文の最終確認画面で「お試し」や「トライアル」など、あたかも期間に制限がないような表示をすることが、消費者を誤認させる可能性があるため禁止されています。
また、注文を続けていく過程で、「送信する」や「次へすすむ」ボタンを押すと、商品の購入が完了してしまうような、契約の申込みが分かりづらいような表示も禁止されています。
消費者を誤認させないためにも、注文の過程がわかりやすいような、文字サイズやページやボタンの色、設置位置に気を付ける必要があるのです。
申し込みの撤回、キャンセルを妨げる不実告知の禁止
契約や申し込みの撤回や、定期購入などの解約を購入者が申請した場合、その申請を妨げるような不実の告知を事業者が行うことも禁止されるようになりました。
不実の告知とは、事業者が契約を締結する際に、事実と異なる重要事項を購入者へ説明することを指します。
不実の告知で定められている重要事項には、以下のようなものがあります。
- 申し込みの撤回、キャンセルに関する事項
- 契約の締結の際に必要となる条件に関する事項
例えば、「定期購入に関して、残りの回数分の代金を支払わないと契約を解除することができない」など契約に関して虚偽の事項を伝えることが禁止されているのです。
不実の告知に関しては、電話に限らず、メールによる連絡も禁止事項として該当します。
注文に関する取消権の設定
最後に、改正された特定商取引では、注文に関する取消権が設定されました。上記で解説した3つの事項を事業者が守らず、消費者が誤認して契約してしまった場合に契約を取り消すことができるようになりました。
消費者が取消権を行使することができる場面は、具体的に以下の4つがあります。
- 事業者が表示している情報が不実の表示であり、かつ消費者がその情報を事実であると誤認して契約を締結してしまった場合
- 事業者が必要事項を表示せず、かつ消費者がその表示されていない事項を存在していないと誤認してしまった場合
- 事業者が申し込みに関して誤認させるような表示をし、かつ書面の送付また情報の送信が申し込みとならないと消費者が誤認した場合
- 事業者が表示事項について誤認させるような表示をし、かつ6つの表示事項(販売価格など)に関して消費者が誤認をした場合
ECサイトを運営する際は、特定商取引法を理解すべし!
本記事では、商品・サービスの販売に関して規定を定めている法律である「特定商取引法」について詳しく解説してきました。
ECサイト上での取引も特定商取引法の対象となっているため、基本をしっかりと把握することで、消費者とのトラブルの回避、そしてサイトの信頼性の上昇につながります。
特定商取引法は度々改正がなされるため、内容の把握に苦労するかもしれませんが、逐一しっかりと理解して、サイトに反映させるようにしましょう。
特定商取引法にECサイトが対応できていないと様々なデメリットがあるため、消費者庁のガイドラインを参考に、今一度見直してみてはいかがでしょうか?
また、EC業界を取り巻くニュースの把握やサイト反映が難しい場合であれば、他社への
アウトソーシングも検討してみてください。
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