現在、ECサイトを利用して商品を購入することが当たり前となっており、洋服や日用品に限らず食品や飲料を扱うECサイトが増加しています。
「自社サイトの新たな商品としてお酒を扱いたい」
「現在店舗でのみお酒を販売しているが、ECサイトでも販売したい」
など上記のように、ECサイトで酒類を販売したいと考えている方も多いのではないでしょうか?
実際、通信販売専用の免許が必要であったり、酒類の販売時の表示ルールを守ったりなど、ECサイトで酒類を販売するためには注意しなければいけないことがあります。
この記事では、酒類をECサイトで販売するために必要な事項に関して、5つの項目で詳しく解説していきます。
お酒を販売するために必要な免許とは?
酒類を販売するためには、酒類を販売している箇所ごとに所轄の税務署からの免許の取得が必要となることが酒税法で定められています。
免許を取得せずに酒類の販売を行った場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が課せられることが酒税法で定められています。
酒類を販売するための免許の種類は、販売先や販売方法によって異なり、小売業のための免許には以下の3種類があります。
- 一般酒類小売業免許
- 特殊酒類小売業免許
- 通信販売酒類小売業免許
それぞれの販売免許について詳しく解説していきます。
一般酒類小売業免許
一般酒類小売業免許とは、販売所で消費者に対して酒類を小売販売する際に必要となる免許です。
酒類を陳列する店舗がなければ申請できませんが、一般酒類小売業免許を取得すれば、希少な輸入酒や地酒など、原則としてすべての種類の酒類を販売所で取り扱うことが可能です。
また一般酒類小売業免許を取得することで、販売所と同一県内の消費者に対して、酒類の通信販売を行うこともできます。
特殊酒類小売業免許
特殊酒類小売業免許とは、消費者の酒類に対する特別な必要に応えるために、酒類を小売販売することが認められる免許です。
たとえば社内で会社役員や従業員に対して社内で酒類を販売したりすることが、特別な必要として認められています。
通信販売酒類小売業免許
通信販売酒類小売業免許とは、通信販売において酒類を小売販売する際に必要となる免許です。
ここでの通信販売とは、2都道府県以上の広範囲に及ぶ消費者を対象としてインターネットや電話などの通信手段を利用して売買契約を結ぶ販売方法のことを指します。
広範囲の消費者に向けて酒類を販売することは可能ですが、取り扱うことができる酒類には制限があります。
したがって全国の消費者に向けてECサイトで様々な酒類を販売したい場合は、一般酒類小売業免許と通信販売酒類小売業免許、両方の取得が必要となります。
通信販売酒類小売業免許を取得するためには
ECサイトで酒類を取り扱う際には、通信販売酒類小売免許の取得が原則として必要となります。 しかし全員が自由に通信販売酒類小売免許を取得できる訳でなく、取得するためには、大きく分けて以下の4つの要件を満たす必要があります。
- 人的要件
- 場所的要件
- 経営基礎要件
- 需給調整要件
ここではそれぞれの要件について詳しく解説していきます。
その1:人的要件
人的要件では、主に酒類の販売者が過去に免許の取り消しや処分を受けたことがないかなど、酒類の販売者として適切であるかが確かめられています。 人的要件で確かめられる要件としては、以下の6つのようなものがあります。
- 申請者が、過去にアルコール事業法許可の取り消し処分を受けたことがないか
- 免許取り消し1年前に業務執行役員であり、かつ取り消しから3年が経っている
- 申請者が、過去に国税または、地方税の滞納処分を受けたことがないか
- 国税または、地方税の滞納処分を受けて3年が経過しているかどうか
- 未成年者飲酒禁止法や風営法などによる罰則より3年が経過しているかどうか
- 申請者が禁錮刑以上の刑に課せられたことがある場合、3年が経過しているか
その2:場所的要件
場所的要件では、酒類を販売している場所が適切であるかどうかが確かめられています。
場所的要件で確かめられる要件としては、以下の2つのようなものがあります。
- 申請した販売場所が、製造場所や既に販売免許を受けている場所と同一でないこと
- 申請場所による営業が、土地の区割りや代金決済などにおいて、別の営業と明確に区分されていること
その3:経営基礎的要件
経営基礎要件では、申請者が破産している場合、復権しているかどうか、経営の基盤が脆弱でないかどうかなど、酒類の販売者に知識や資金が十分にあるかどうかが確かめられています。 経営基礎要件で確かめられる要件としては、以下の7つのようなものがあります。
- 国税または地方税を現在滞納していないかどうか
- 過去一年以内に銀行から取引停止処分を受けていないかどうか
- 最終事業年度の繰越損失が資本額を上回っていないかどうか
- 最終事業年度以前の3事業年度の全期間で資本額の20%以上の欠損がでていないか
- 酒税に関する法令に違反して通告処分または告発を受けていないかどうか
- 販売所の位置が法律に違反していないか、また除却や移転が命じられていないか
- 販売所の管理体制が酒類の販売に適切であるかどうか
その4:需給調整要件
需給調整要件では、酒類の需給を均衡にするために通信販売酒類小売業免許で販売できる酒類の範囲が以下のように定められています。
- 年間販売量が3,000キロリットル未満の製造者が製造・販売する国産のお酒
- 輸入酒全般(特に制限はありません)
通信販売酒類小売業免許の取得方法・費用とは
通信販売酒類小売業免許の特徴や取得時の要件について詳しく解説してきましたが、実際にどのように取得すればよいのか分からない方もいるのではないでしょうか?
通信販売酒類小売業免許は主に以下の3つの手順で取得することができます。
- 申請書など必要書類の提出
- 審査
- 免許付与の通知(登録免許税30,000円)
まずは、酒類販売業免許申請書および、添付して提出しなければいけない書類を作成し、販売所が所在する地域を管轄している税務署に提出をします。
まずは、酒類販売業免許申請書および、添付して提出しなければいけない書類を作成し、販売所が所在する地域を管轄している税務署に提出します。
申請書では、販売所の全体図や広さ、事業状況や計画、実際にどのような取り組みを行っているのかが分かるように必要事項を記載します。
また場合によっては、ECサイトのトップページのレイアウトやサイト全体像が分かるものを必要書類として求められる場合があります。
詳しく知りたい方は国税庁のHPで掲載されている通信販売酒類小売業免許申請の手引を参考にしてみてください。
参照:国税庁「通信販売酒類小売業免許申請の手引き」
次に提出書類を元に審査が行われます。
申請の量によって変わりますが、申請書類の審査には通常約2カ月の期間が必要となります。
提出された書類に修正が必要な場合は、修正が完了するまで審査が保留されてしまうので注意するようにしましょう。
審査の結果、通信販売酒類小売業免許が付与される場合、書面にて免許取得の旨が申請者に通知されます。
免許取得時に登録免許税として30,000円を納付しなければいけません。
しかし既に一般酒類小売業免許を取得しており、新たに2都道府県以上の範囲の消費者に酒類を販売するために取得する場合は、登録免許税の納付は必要ありません。
実際にECサイトで販売する際の注意点
通信販売酒類小売業免許を取得すると、実際にECサイトで酒類を販売することが可能となりますが、実際に販売する際の注意点として以下の5つの点があります。
- 未成年者への酒類の販売を防止するための表示基準
- ネットショップ以外では販売できない
- 仕入れや販売状況の記帳義務がある
- 申告が必要となる場合がある
- 酒類の販売を管理する者を選ぶ
注意点を守らないと、処罰や免許取り消しの対象となる可能性があるため、必ず遵守するようにしてください。
ここではそれぞれの注意点について詳しく解説していきます。
その1:未成年者への酒類の販売を防止するための表示基準
「ニ十歳未満の者の飲酒防止に関する表示基準」とよばれる、その名称通り未成年の飲酒を防止するために、遵守しなければならない酒類を販売する際の表示基準があります。
また「未成年者の飲酒は法律で禁止されています」という文言を酒類の商品のラベルや店舗で目にしたことがある方も多いのではないでしょうか?
この文言は「重要基準」とよばれ、ECサイトなどの通信販売においても重要基準や、表示基準を記載することが必要となります。
通信販売における表示基準では、具体的に以下のようなルールが定められています。
- 酒類に関する商品ページに「20 歳未満の者の飲酒は法律で禁止されている」または「20 歳未満の者に対しては酒類を販売しない」という内容を記載すること
- 酒類の購入カート画面にて、購入者の年齢記載欄を設けること
- 購入完了メールなどの納品書に「20 歳未満の者の飲酒は法律で禁止されている」という内容を記載すること
- 重要基準の表示は商品金額より大きな文字サイズ、具体的には10ポイント以上の活字で記載すること
違反をした場合、国税局からの指示や命令があったり、最悪の場合50万円以下の罰金が課せられたりするため、表示基準を遵守するようにしましょう。
その2:ネットショップ以外では販売できない
通信販売酒類小売業免許は、ネットショップでの販売を限定とした免許です。商品を店頭で販売したい場合は、一般酒類小売業免許や特殊酒類小売業免許など、別の資格を取得することが必要となります。
店舗でも通信販売でも酒類を販売したい場合は、一般酒類小売業免許と通信販売酒類小売業免許、両方の免許を取得することがオススメです。
また一般酒類小売業免許では原則として全ての品目の酒類を販売することができるため、取得しておくとECサイトの商品ラインアップを増やすことができます。
その3:仕入れや販売状況の記帳義務がある
酒類の販売者は、仕入れや販売に関して以下の事項を帳簿に記載する必要があり、またその帳簿は販売所に常時備えておき、5年間保存しておく必要があります。
- 仕入(販売)数量
- 仕入(販売)価格
- 仕入(販売)した日時
- 販売先の住所および氏名または名称
税務署の職員が取り締まりとして検査が必要だと判断した場合、帳簿を提出する必要があるのでしっかりと記載し、保管しておくようにしましょう。
その4:申告が必要となる場合がある
酒類の販売者は、翌年度の4月30日までに4月1日から翌年の3月31日までの、品目別販売数量の合計と3月31日時点の在庫量を毎年申告する必要があります。 また、以下のような場合も申告が必要となります。
- 住所や氏名、半場所の所在地に異動が合った場合
- 酒類の販売を停止、または再開する場合
- 免許を取得した場所に酒類を貯蔵する倉庫を設ける場合、または廃止する場合
- 所轄の税務署長から販売先に関する報告を求められた場合
その5:酒類の販売を管理する者を選ぶ
小売業者の場合、ECサイトで酒類の販売を始める前に、販売所ごとに「酒類販売管理者」を選ぶ必要があります。
原則として酒類の販売は、酒類販売管理者の助言や管理の元で行うことになります。
酒類販売管理者になるためには、以下の5つの条件を満たしている必要があります。
- 未成年者でない
- 酒類販売管理研修を過去3年以内に受けている
- 意思疎通を正しく行うことができる
- 6カ月以上引き続き雇用されることが予定されている
- 他の販売所で酒類販売管理者に選ばれていない
酒類販売管理者を選ばなかった場合は、50万円以下の罰金が課せられることになっているため、注意が必要です。
ECサイトでお酒を販売する際には注意事項を厳守すべし
この記事では、まず酒類を販売するために必要となる免許の種類を解説しました。
そしてECサイトで酒類を販売するために必要となる通信販売酒類小売業免許の取得に必要な手続きや要件について詳しく紹介してきました。
アパレルネットショップといっても、規模や取り扱う商品がそれぞれ異なるため開業時に必要な準備や、運営時の戦略も異なります。
ECサイトでお酒を販売するためのポイントには以下の2つがあります。
- 通信販売酒類小売業免許を取得するための申請書を丁寧に作成する
- 表示基準や酒税法で定められている注意事項に気をつける
ECサイトで酒類を販売する際には注意事項も多く、対応をしていくことは大変ですが、安全に販売するためにもポイントをしっかりと抑えて、事業の成長へと繋げていくようにしましょう。
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